労災保険の内容

労災保険とは

dahigfrvka 0001


 労災保険とは、労働者が労務に従事したことによって被った死亡、負傷、疾病といった労働災害について、事業者の過失の有無を問わず、財産的損害(治療費や休業補償、逸失利益)の一定割合補填するための制度です。


 法律的には、労働基準法75条以下に規定された業務上の負傷や疾病等に対する使用者の補償義務に対し、その実効性を確保し災害補償の迅速かつ公正な実施を図るための制度として労働者災害補償保険法により制定・運用されています。

 労働者の業務・通勤による傷病、死亡への迅速、公正な補償をし、社会復帰の促進、遺族の援護、適正な労働条件の確保等を目的にし(労災保険法1条)、政府が管掌するものとされ(同法2条)、労働者を使用する全事業を適用事業としています(同法3条)。

 

労災保険はどのような場合に給付を受けられる?

 労災保険は、業務災害、通勤災害に対して給付されます。負傷などが業務や通勤など業務に関連し、業務が原因となって発生した(業務との因果関係がある)ことが必要です。
 労業務やと関係のない事故による負傷や持病等については労災支給の対象とはなりません。

 どのような場合に労災保険支給の対象となる(業務との関連性が認められる)かについては、一般に①業務遂行中の傷病等か否か、②業務を原因とする傷病か否か、といった観点から判断がされますが、個別具体的な事情によって結論が変わってきます。

 大きな事故が発生し怪我をした、といった場合は判断が比較的容易ですが、例えば過労による脳や心臓の血管疾患等は、勤務状況だけでなく本人の病歴、生活習慣や健康状態等も大きく関係してきますので、個別に判断することが必要になります。

 

労災保険の給付内容

労災保険は、給付の内容が法律に定められており、以下のような内容です。

給付の種類 給付の条件 給付の内容 特別支給金の内容
療養(補償)給付 労災病院・指定医療機関等で治療を受ける場合 労災病院・指定医療機関等での必要な療養の給付  
労災病院・指定医療機関等以外で治療を受ける場合 必要な療養の費用の給付  
休業(補償)給付 療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき 休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%相当額 休業4日目から、給与基礎日額の20%相当額
障害(補償)給付 障害(補償)年金 症状固定後に障害等級1級から7級までに該当する障害が残ったとき 障害の程度に応じ,給付基礎日額の313日分から131日分の年金 (障害特別支給金)障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金 (障害特別年金)障害の程度に応じ、基礎日額の313日分から131日分の年金
障害(補償)一時金 症状固定後に障害等級8級から14級までに該当する障害が残ったとき 障害の程度に応じ,給付基礎日額の503日分から56日分の一時金 (障害特別支給金)障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金
(障害特別一時金)障害の程度に応じ、基礎日額の503日分から56日分の一時金
遺族(補償)年金 遺族(補償)年金 死亡したとき 遺族の数等に応じ,給付基礎日額の245日分から153日分の年金 (遺族特別支給金)遺族の数に関わらず一律300万円 (遺族特別年金)遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金。
遺族(補償)一時金 ①遺族(補償)年金を受け得る遺族がいないとき、
②受給者が失権し他に年金を受け得る者がいない場合で、既に支給された年金合計額が給付基礎日額1000日分未満のとき
①の場合、給付基礎日額の1000日分の一時金
②の場合、1000日分との差額
(遺族特別支給金)遺族の数に関わらず一律300万円 (遺族特別一時金)遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の一時金(②の場合は既に支給された特別年金の合計額を差し引いた額)。
葬祭料 死亡した人の葬祭を行うとき 31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額  
傷病(補償)年金 療養開始後1年6ヶ月を経過した日において,次の各号のいずれにも該当することとなったとき 
①傷病が治っていないこと
②傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること
障害の程度に応じ,給付基礎日額の313日分から245日分の年金 (傷病特別支給金)障害の程度により114万円から100万円までの一時金
(傷病特別年金)障害の程度により基礎日額の313日分から245日分の年金
介護(補償)給付 障害等級1級又は2級の者であって,現に介護を受けているとき 常時介護の場合は,介護費用として支出した額(上限額10万4290円)。ただし,親族による介護のため介護費用を支出していない場合又は支出額が5万6600円を下回る場合には5万6600円。  

 

会社が労災加入の手続きをしていなかった場合でも給付は受けられる

YB1_79410001

 労災保険は万一の労働災害発生時に労働者の最低限の治療や生活を保障する目的で、原則として1人でも従業員を雇用する事業者は加入が義務付けられています(小規模個人経営の農林水産業者のみ例外有。公務員は適用外ですが、別途法律があります)。


 しかし、法律上加入が義務であるにもかかわらず、経費の増加を嫌う等の理由で業員を雇用しながら労災保険に加入しない事業者は後を絶ちません。
 万一、このような保険加入手続きを怠っている事業者の下で勤務中に労災にあった場合どうなるのでしょうか。

 このような場合、労災保険は労働者の必要最低限の保護を目的にしていますので、労働者自身には未加入について落ち度がない以上、保険給付は通常通りされます。

一見、保険に未加入なのに保険金だけ受領できてずるいようにも見えますが、未加入のまま事業を行っていた事業者に対しては、事情に応じて支給された保険給付額の40%ないし100%の徴収というペナルティが課されることになります。

 労働者としては、会社が労災保険未加入であったとしても、労災保険給付の申請をあきらめる必要は全くありません。

 

手続きはいつまでにしなければいけない?

 金銭を請求する権利については、一定の期間行使しないと時効消滅してしまうとされています。保険給付の支給決定を請求する権利は労働者、遺族がいつ行使(申請)しても良いのですが、あまり長期間行使しないでいると時効によって消滅してしまいます。

 労災の給付は各給付ごとそれぞれに申請が必要ですが、その手続きをいつまでに行わなければならないか(時効期間)はそれぞれの給付毎に異なります。

 下表のとおり、およそ2年ないし5年の時効期間が定められているため、この期間内に手続きをしないと給付を受けられないことになってしまいます。

給付の種類 時効の起算日  
療養(補償)給付(労災病院・指定医療機関等以外で治療を受ける場合) 療養に要する費用の支出が具体的に確定した日の翌日 2年
休業(補償)給付 労働不能のため賃金を受けない日ごとにその翌日 2年
障害(補償)給付 傷病が治った日の翌日 5年
遺族(補償)給付 労働者が死亡した日の翌日 5年
葬祭料 労働者が死亡した日の翌日 2年
傷病(補償)年金    
介護(補償)給付 介護保障給付の対象となる月の翌月の1日 2年

※傷病補償年金及び傷病年金は政府の職権により支給が決定されるものとされており、時効の問題は生じないとされています。

 

労災の申請が却下された場合

 労働基準監督署に対する労災の申請をした場合にも、労働災害とは認められないなど必ずしも望んだとおりの判断がされない場合があります。
 労災保険の支給、不支給に関する労働基準監督署長の判断に不服がある場合、これを争う不服申し立てをすることを検討する必要があります。

 不服申し立ての方法については、①その決定をした労働基準監督署の所在地を管轄する労働局の労働者災害補償保険審査官への不服申し立て②この審査官の裁決結果に不服がある場合又は審査官が3か月以内に裁決をしない場合に行うことのできる労働保険審査会に対する再審査請求③裁判所への行政訴訟、という方法があります。

 いきなり訴訟をすることはできず①から③の順番に手続きを進めていくことになりますが、①は労働基準監督署長の決定を知った日の翌日から60日以内、②は審査官の裁決書謄本を受け取ってから60日以内にそれぞれする必要があります。

 時間制限がありますので、注意が必要です。

当事務所の最新トピックス・解決事例はこちらをご覧ください事例一覧