うつ病による自殺(広島地判平成12年5月18日)
高温となる製造工場内の作業現場で、夏季に長時間(午前4時から午後9時など)の労働に従事、配置転換により実質的に責任者の役割を果たすことになり精神的負担が増大するなどの事情からうつ病に罹患し、自殺をするに至った事案。他の従業員が救急搬送されたことがある、原告も脱水症状で病院受診したことがあるなど、会社として勤務環境について理解していたこと、原告の発症前の様子(辞めたい、などと繰り返し上司に伝えたり、普段の様子も変わってきていた)等の事情から、会社の側には心身の故障を疑い、「同僚や家族に対して勤務時間内や家庭内における言動、状況について事情を聴取すベき義務かあった」にもかかわらずこれをせず、部署の変更や医師の治療を受けさせるなどすべきであった、として使用者の安全配慮義務違反を認定しました。
また、この事案では、「うつ病に罹患した後においては、疾病の性質からして、精神神経科を受診しなかったこと及び自殺に至ったことを過失と認めるのは相当でない」「業務外において心身の慢性疲労を生じさせるような原因があったことを認めるに足りる証拠はない」として原告の過失を否定し、またが「うつ病を発症し易い性格要素を有していたとしても、それは通常の性格傾向の一種であるにすぎ」ないとして損害賠償請求の減額事由と認めませんでした。
損害額
逸失利益 7731万2235円
慰謝料 2300万円
葬儀費用 130万円
以上から、労災保険給付として支給を受けた葬祭料50万20円を葬儀費用から控除した1億111万2215円を損害額とし、これに弁護士費用1000万円を加えた額の支払いを命じました。
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